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PROJECT03
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LASER HEADLAMP
レーザーヘッドランプ
未知のマーケットへの挑戦!
レーザーヘッドランプ

スタンレーは2012年~2013年にかけてレーザーヘッドランプの開発に挑み、世界で初めてナンバーを取得した車(SIM-Drive社の先行開発車事業の第三号「SIM-CEL(シム・セル)」)にレーザーヘッドランプを搭載した。スタンレーのこの挑戦の背景とこのプロジェクトを成功に導いた若き一人の社員の情熱と取り組みにスポットを当てる。

STORY 01
挑戦の背景

電気自動車時代を見据えて
次世代光源のレーザーに注目

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2000年代に入って次々と実用化され、いまや世の中になくてはならない存在となったLED。スタンレーではすでに自動車のLEDヘッドランプやLED街路灯など、私たちの身の回りにあるさまざまなLED照明を製造し、数多くの実績をあげている。
まさに時代の先端を突き進むスタンレーだが、同社は現状に甘んじることなく、さらに一歩先の技術を見据え、試行錯誤を続けている。その代表例がSIM-Drive社の先行開発車事業の第三号「SIM-CEL(シム・セル)」に搭載されたレーザーヘッドランプである。
もともとスタンレーはSIM-Drive社の先行開発車事業第一号、第二号にも関わり、LEDヘッドランプ、LEDリアランプを提供してきた。だが、第三号への参加はこれまで以上に力が入っていた。スタンレーとして電気自動車の時代にどんなビジネスを想定できるか――。その糸口をつかむことを、今回のプロジェクト参加の目的として掲げていたからだ。
参加にあたってスタンレーが具体的なテーマとして掲げたのは、次世代光源である半導体レーザーだった。LED以上に明るく、ランプを小型化しやすいという特徴があるレーザーは当時から注目を集めていたが、ナンバーを取得した車へのレーザーヘッドランプの搭載事例はなかった。次代を見据えたプロジェクトに参画するにあたって、レーザーはまさに最適なテーマだったのだ。

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STORY 02
若き挑戦者

最適なレーザーヘッドランプのために
一から電気自動車のことを学ぶ

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このプロジェクトを推進するにあたって白羽の矢が立ったのは、研究開発センターに所属していた北園卓也だった。当時、北園は入社5年目で、横浜にある研究開発センターに所属していたが、SIM-Driveの先行開発車事業第3号に参画するため、2012年から2013年にかけてSIM-Driveに社外出向し、同社のオフィスに常駐することになった。
「入社当初に自動車のリアランプの研究開発に携わったことがありましたが、その後は別チームでLEDの街路灯の開発を担当していたため、自動車、ましてや電気自動車に関する知識はほとんどありませんでした。それだけにプロジェクトに抜擢された時は少なからず不安も感じていました」
だが、持ち前の熱意で北園は前向きにプロジェクトに挑んだ。わずかな期間で電気自動車の仕組みや特徴を猛勉強し、出向に臨んだのだ。「ランプを開発するには、それがどのような条件下で、どのように使われるかを想定しなければ、顧客満足度の高いものを生み出すことはできません。そのためにも、私自身が電気自動車に関して学ぶことは不可欠だったのです」と北園は振り返る。
なお、このプロジェクトに参加したのは約26社、その多くはスタンレー同様、自動車部品関連のメーカーだったが、なかにはレンタカー事業のようなサービス業も含まれていた。そういった多彩な人たちと机を並べ、北園は日々、電気自動車に関する講義を受けたり、他社の技術者と電気自動車社会の実現やその変革によるビジネスチャンスなどについて議論を交わし続けた。そして、それと同時にスタンレーの技術研究所と連携しながら、レーザーヘッドランプの開発や国土交通省陸運局への申請なども進めていった。

STORY 03
課題を乗り越えて

開発部門と連携して
レーザー特有の課題を解消

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レーザーヘッドランプに用いられるレーザー励起光源モジュールの仕組みは、放射角が狭い半導体レーザー光を蛍光体に集光し、発光面積が小さい白色光源を得るというものだ。このレーザー光源には先述したとおり、LED以上に明るく、小型化しやすいという特徴がある。ただし、実際にナンバーを取得した車に搭載するとなると、安全対策や高温への対応などの課題を解消する必要があった。そこで、北園はスタンレーの研究開発センターと二人三脚で調整を重ねていった。
「開発部門と協力して、レーザーの特徴を最大限に引き出すためにリフレクターやレンズといった光学系に工夫を凝らしつつ、熱マネジメントの制御に努めました」
その対策の一つとして用いられたのがシャットダウン機能だ。文字どおり、一定の熱を持ったタイミングでレーザーの発光を止めるという機能だが、そのタイミングを決めるのにも議論を交わす必要があった。
「守らなければならない法規がある一方、技術者たちはより明るく、安全性の高いランプになるように努力していたので、シャットダウンしない状態をなるべく長くしたいと考えていました。そうした状況でさまざまな関係者の意見や考えを取りまとめ、最適解を見出すのが自分の役割でした」
そういった議論の種は至るところにあった。ランプの配置や光の強度といった項目に関しても、北園は同様に調整を進め、最適解を求め続けた。また、ナンバーの申請にあたっては世界初の事例ということもあり、陸運局の担当者から事細かく質問されることもあったが、その都度、研究開発センターと連携しながら丁寧に説明を重ねていった。その苦労は並大抵のものではないが、研究開発センターでさまざまなタイプの「照明」について学んだ上で電気自動車全般の知識を得た北園だったからこそ成し遂げることができたとも言える。

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STORY 04
プロジェクトの成果

電気自動車で成果を得たレーザー
今後は幅広い分野での応用を模索

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※写真は原理確認用ユニット
(左:レーザー励起光源モジュール1個、右:LEDモジュール2個)

最終的に完成したレーザーヘッドランプには、ロービームとしてLEDを用いたモジュールとレーザー励起の白色光源を用いたモジュールがそれぞれ2個ずつ搭載された。ヘッドランプの上側に備え付けられたLEDモジュールが路面全体を照らし、ヘッドランプの下側のレーザー励起光源モジュールが遠方を照らすという仕様である。
「当初はレーザーのみを使用するという考えもありましたが、ランプとしての安定性を重視し、レーザーとLEDを併用する形に仕上げました。それでもこのランプの性能は抜群です」
事実、従来のLEDヘッドランプが3ルクスの明るさで115mまで照らせるのに対し、レーザーヘッドランプでは170mまで照らせるようになっている。また、ランプから65mの距離における照度は従来品が10ルクスであるのに対し、開発品は18ルクスとなっている。しかも、レーザー励起光源はLEDに比べて発光サイズが10分の1であり、小型のモジュールを実現できる。
「昨今のモーターショーでもランプの小型化はトレンドになっているので、小型モジュールを実現できるレーザーヘッドランプがソリューションになる可能性は大いにあると思います」
また、このプロジェクトの成功を経て、北園はさらに成長することができたと振り返る。
「社外の人たちと多く接することで、あらためてスタンレーのことを幅広く知ることができました。スタンレーは自動車分野に限らず、光源やディスプレイ、回路など幅広い事業領域を有しています。自動車などで確立した技術をそういった幅広い分野で応用していくことで、さらにスタンレーと自分の可能性を広げることができると感じました」
現在、北園は設計技術センター商品企画課にて、他部門と連携しながら新商品の企画提案や開発プロセスの最適化などにあたっている。スタンレーの技術を俯瞰し、新たなビジネスを生み出す業務に携わっているだけに、このプロジェクトでの経験はこれからも大いに活かされていくことだろう。

レーザーヘッドランプ

レーザーヘッドランプは次世代光源であるレーザー励起光源(※)を光源に用いたヘッドランプです。
レーザー励起光源はLEDと比べ、発光サイズが小さく、高輝度でありヘッドランプの小型化が可能です。
高輝度な光源により、遠方視認性が向上した、より安全性の高いランプを実現できます。

※レーザー光を基に白色光を創り出している

スタンレー電気は㈱SIM-Driveが発表した第3号試作電気自動車「SIM-CEL」で、世界で初めてナンバーを取得した車輌にレーザーヘッドランプを搭載しました。

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「SIM-CEL」に搭載されたレーザーヘッドランプ
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「SIM-CEL」に搭載された
レーザーヘッドランプ
(株)SIM-Drive第3号試作
電気自動車 「SIM-CEL」