プロジェクト PROJECT

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PROJECT01
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LED FLOODLIGHT
LED投光器
今回のプロジェクトで開発された
LED投光器
「LEDS FOCUS」

省エネルギー・長寿命で環境負荷の少ない製品が次々と開発される昨今、ますます注目度が高まっているLED。

そんな中、スタンレー電気は世界的に著名な照明デザイナー石井幹子氏から、ドイツ・ベルリンで開催される、日独交流150周年記念のイベントに力を貸してほしいという依頼を受けた。そのプロジェクトは、東西ドイツ統合の象徴であるブランデンブルグ門の頂上に鎮座するクアドリガ(四頭馬車)と女神ヴィクトリアを60メートル以上離れた場所からライトアップするというもの。

石井氏はスタンレーとLED照明を用いたコラボレーションを行うなど以前から交流があったことからスタンレーの技術を熟知していた。そのため、今回、様々な制約のある中で思い通りのライトアップを実現するには、スタンレーのLED投光器でなければ実現出来ないという理由から依頼が舞い込んだのだった。

60メートル以上も離れた対象物をムラ無く照らすには、高度な配光技術と今までに無い高輝度LEDが必要となる。イベント開催まで残された期間はわずかだったが、スタンレーは依頼を快諾。プロジェクトを成功させるために社内の精鋭たちが集められた。 そして、世界に類をみないLED投光器を生み出すべく、開発者たちの試行錯誤が始まった。

STORY 01
開発段階

「理想の光」を実現するために
世界にも類をみないLED投光器の開発へ

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開発者のプライドをかけた闘いが始まった

過去にもLED投光器を試作した経験はあった。しかし依頼内容は60メートル以上も離れた場所に光源を設置し対象物を照らすという今までにない厳しい条件。
今回、LED投光器開発を任されたのはLED照明のエキスパートである北園。彼はまず、従来のLEDを用いて要件を満たすことが出来ないか検証を実施した。
「やはり従来のLEDでは60メートル以上先の対象物を照らすには光量が不十分でした。また、美しくライトアップするためにはムラの無い均一な明るさが必要ですが、その点においても満足できるものではありませんでした」(北園)

関係者間で議論を重ねた結果思いついたのは、別の用途で開発を進めていたLED投光器「LEDS FOCUS(レッズフォーカス)」。高輝度LEDと超狭角配光を実現する新開発レンズを搭載した「LEDS FOCUS」であれば今回の厳しい要件を満たすことが出来るのではないかと、早速試作に取りかかった。
しかし、まだ開発段階である「LEDS FOCUS」は、LED素子、電源、照明ユニットに至る全てを製作するのに1台あたり3カ月を要する。更に、これまで海外で「LEDS FOCUS」を使用したことはないため、現地の電圧・周波数への対策や新たな部材の選定も必要となる。

「世界的に著名な方とのコラボレーション。そのうえ、日独交流150周年記念という注目度の高いイベントへの参画。決して失敗は許されないという気持ちから不安もありましたが、今回集まったメンバーならばきっとやり遂げることができるという信頼の方が大きかったですね。」そう話すのはプロジェクトリーダーを務めた望月。
しかし、実現へ向け走り始めたもの問題は山積みだった。その一つが配光における色ムラの解消である。「LEDS FOCUS」の特殊な超狭角レンズで光を絞ると色ムラが現れることが多く、60メートル以上先から対象物をムラなく照らすのは至難の業。まずこの難関をクリアすべく、開発者の闘いはスタートした。

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明るさ、色みが均一な「美しい光」を求めて

今回「LEDS FOCUS」開発に際し、青色の素子に蛍光体等独自の配合を施したLEDを使用することとなった。
明るくムラの無いLED素子を作り出すことは容易な事ではない。蛍光体等の配合を少し変えるだけで、白いはずの光がやや黄色み、もしくは青みを帯びて見えたりするのである。均一な明るさを実現するにはどうすればいいのか、LED 素子の開発担当として藁谷も加わり、実現へ向けたアイデア出しが始まった。

「LED素子を構成する蛍光体等を配合する作業は非常に繊細な作業です。同じ配合で素子を作成しても、必ずしも同じ色みや明るさが得られるとは限りません。今までの経験と知識を駆使して取り組みましたが、なかなか理想の光が得られず焦りました」。

「プロジェクトメンバーに選ばれ、嬉しいという思いと同時にプレッシャーを感じていました。絶対に先輩の足手まといにはなりたくない、少しでも多くプロジェクトに貢献してみせる、と覚悟を決めて開発に臨みました」(藁谷) 藁谷はLED素子を構成する部材の選定や配合を徹底的に検討。アイデアを出し、最終的には全ての案を納得がいくまで試してみることにした。

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STORY 02
ブレークスルー

均一な明るさを備えたLED投光器を求めて
一切の妥協を許さない開発者たち

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試作を重ねるごとに着実に「理想の光」へと
近づいていった

「全ての案を試す」と一言で言うのは簡単だが、投光器1台を試作するには少なくとも100~200個のLEDが必要となる。
藁谷は通常であれば2週間をかけて作る素子をなんとか3日で作り、LED投光器のモジュール製作を担当する北園のもとへ持ち込み、検証に臨んだ。
「二人が毎日試行錯誤しながら素子を作っていることは百も承知でした。しかし、色ムラの無い光を実現するまでは絶対に妥協したくありませんでした。」(北園)

幾度となくLEDを作り検証に臨んだが、わずかな色ムラを理由に北園から再度試作を依頼される日々。しかしメンバーは暗室に集まっては、根気強く検証を重ねていった。残された開発時間は日に日に少なくなっていったが、粘り強く試作と検証を重ねたことで目指す「理想の光」に着実に近づいていくのが誰の目にも明らかだった。

イベント開催を直前に「理想の光」を
備えたLED素子が完成

数えきれないほどの試作と検証を重ねた結果、ようやく要件を満たすLED素子が完成した。しかし、なかなか北園のOKは出ない。既に要求されていた色温度は満たしていたのだが、北園が最後までこだわったのは数値では表せない見栄えだった。様々なシチュエーションで見たときに、その光が均一に白く見えるかという点で一切の妥協を許さなかったのである。LED素子を単体で見たときには確認出来ないわずかな色ムラであっても、LEDS FOCUSのように超狭角に光を絞ると、色ムラとなり現れてしまうのだ。北園は藁谷と何度も話し合いを重ね、最適な色の組み合わせを考えた。

何度も検証し、少しでも色ムラが現れたらまたパッケージの作製からやり直し。 数値だけでは見えてこない、最後の微調整こそ、北園ら開発者たちの腕の見せどころでもあった。そしてイベント開催まで1カ月を切った頃、ようやくプロジェクトメンバー全員が納得できるLEDが完成。そこから更に通常であれば1台3カ月もかかるLED投光器の作製を20台分、わずか10日あまりで組み上げねばならなかった。北園が指揮を執る中、研究開発センターの他の技術者も加わり最後の追い込みが始まった。

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STORY 03
プロジェクトの成功

海外拠点と連携し、輸送面の問題を解決
迎えたリハーサル当日

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日本とドイツの連携プレーで、
輸送に伴う難題を解決

依頼を受けたLED投光器を全て組み上げたときには、既にドイツ・ベルリンに向け輸送の準備をしないと間に合わない時期になっていた。通常であれば現地の設置環境と同様の状況で性能テストをしてから製品を送り出すところだが、テストをする時間すら確保出来ない状況。現地で行われるリハーサルで確認するよりほかなかった。
北園は一刻も早く輸送の手配を完了すべく準備にとりかかったが、そこには更なる難題が。ドイツのイベント会場搬入に関してはいくつもの厳しい制約が定められていたため、通常の海外輸送手続きと比較して何倍もの諸手続きが必要となったのだ。

輸送時の手続きに詳しい社内の物流部門や、ドイツにおけるスタンレーの営業拠点であるStanley Electric GmbHのメンバーの協力を得ながら要件を満たす輸送プランを検討し、ギリギリで手続きを完了した。そしてドイツへ向け「LEDS FOCUS」が輸送された直後、望月、北園の2名もベルリンへ向け出発。イベントに立会い、投光器を設置するためである。
現地へ到着しブランデンブルグ門へ視察に行くと、通常のライトアップにも関わらず周囲は数多くの人々で賑わっていた。「想像していた以上にブランデンブルグ門は大きく、前に立つとその大きさに圧倒されました」と話す北園。この巨大な門の上に鎮座するクアドリガ(四頭馬車)と女神ヴィクトリア像を、「LEDS FOCUS」でムラ無く美しく照らすことが出来るのか。照明デザイナーの石井氏が満足する見栄えを実現できるのか。限られた開発期間の中、一切の妥協を許さず取り組んできた成果が試されるときが近づいていた。

期待と不安が入り混じった中で迎えた
リハーサル当日
人々の心を魅了した
スタンレーの光

期待と不安の入り混じる中迎えた公開リハーサル。日本から到着した望月、北園に加え、Stanley Electric GmbHのメンバーらも加わり、「LEDS FOCUS」の設置作業が始まった。 設置された16台の「LEDS FOCUS」が一斉に点灯すると、眩いばかりの真っ白な光が門の上にそびえる四頭馬車と女神像を美しく照らし出し、周囲からどよめきが上がった。その見栄えは照明デザイナー石井氏も納得のいく仕上がりだった。 「13時から設営を始め、全ての準備が完了したのは日付も変わった夜中の2時。疲労はピークに達していましたが、無事リハーサルを終え安堵の思いでした。」(望月)

リハーサルを経て、本番においても無事成功を収め、日独交流150周年記念イベントは大成功のうちに幕を閉じた。 「石井先生をはじめ、現地の照明のプロの方々をうならせる投光器を作り上げることができ、喜びと共に大きな手ごたえを感じました。イベントを主催していた企業からも「LEDS FOCUS」を是非販売して欲しい、と頼まれたほどでした(笑)」(望月)。「世界的に著名な方と1つのプロジェクトを成功させることが出来たことで、ものづくりに携わる喜びを実感しました。また、開発過程で妥協を許さなかったメンバーの苦労が報われた瞬間でもありましたね。」(北園)

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「LEDS FOCUS」でライトアップされた
クアドリガ(四頭馬車)と女神ヴィクトリア像

STORY 04
エピローグ

数々の難題を乗り越え、
更なる「光の価値」の追求へ

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今回のプロジェクトにおける「LEDS FOCUS」の評価は高く、WEBや新聞など多くのメディアに取り上げられた。スタンレーは現在、このビジネスチャンスを活かすべく、事業部と協力しながら量産化を目指している。そして、開発に携わったプロジェクトメンバーもそれぞれが次の目標を掲げて走り始めていた。
「世界でナンバーワンかつオンリーワンの製品を作りだすべく、今後も全力で研究開発へ取り組んでいきたいと思っています。」(望月)
「LED照明の開発に3年間携わってきましたが、最近では以前から興味のあった自動車照明の開発にも携わっています。自動車機器と電子機器、双方を手掛けるスタンレーでは幅広い研究開発に携わることが出来ます。今後はより多くの知識を身につけ、分からないことがあれば北園へ聞け、と言われるような開発者を目指していきたいです。」(北園)
「本プロジェクトに携わることが出来たことは私にとって大きな収穫でした。少しでも力になりたいという一心でプロジェクトに望みましたが、正直なところ先輩方に助けて頂くことのほうが多かった。今後は周囲から頼られるエンジニアを目指して、何事にも臆することなく挑戦していきたいと思っています。」(藁谷)

無限の可能性を秘めた「光の価値」を追い求めて、今後も開発者たちの飽くなき挑戦は続いていく。