- BUSINESS
- 仕事を知る
PROJECT STORY プロジェクトストーリー
- 世界初・二輪ADB開発
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照射エリアを自動調整し、
ライダーの安全・快適な
走行を支援。
ライダーの安全・快適な
走行を支援。
- OUTLINE
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ADB(Adaptive Driving Beam、配光可変型ヘッドランプ)とは、ハイビームとロービームを状況に合わせて自動的に切り替える機能を搭載したヘッドランプである。電子制御を行っており、光源から配光、構造、システムまで光に関する幅広い技術を持つスタンレー電気の持ち味をいかんなく発揮する製品となっている。
従来、四輪車(自動車)に搭載されてきたこの製品を、二輪車(オートバイ)で利用したい。顧客A社からの声掛けが、世界初・二輪ADB開発のきっかけとなった。社内の様々な部署から約30名が参画したこのプロジェクトは見事に結実し、2025年には社長賞も獲得。その歩みをここで紐解く。
- MEMBER
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浜松製作所
自動車サテライト本部 浜松サテライト部

- 技術窓口担当
- 設計業務経験を有し、製品に関する顧客からの質問に対応し方向性の提案や、顧客ニーズを噛み砕いて社内関係部署に展開するなど、技術面における顧客と社内の橋渡し役を務める。仕様確定にも関与。本プロジェクトには受注後の本格開発時から参画する。

- 営業担当
- 営業面を担い、顧客と当社をつなぐ窓口としてプロジェクトをリード。開発進捗状況やコスト管理、各種手配を行いながら、受注から量産まで円滑な開発推進ができるよう、本プロジェクトの全般的なコントロールを実施。
プロジェクトの流れ
- 先行開発
- 受 注
- 開 発
- 金型製作
- 製品熟成
- 量 産

上位車種にふさわしい
高度な技術として
白羽の矢が立つ
2019年、二輪車をはじめとするモビリティ製品のメーカーであるA社より、「ADBを搭載したオートバイを開発したい」という声掛けを浜松製作所が受けたことが開発のきっかけとなった。当時、A社は新たな国内向け上位車種の開発を検討しており、そのクラス感にふさわしい搭載技術として白羽の矢が立てられたのがADBであった。
この時点で、二輪ADBは世の中に存在していなかった。だからこそ、業界をリードする企業として開発を実らせ、新製品に搭載したい。ビームのハイ/ローを自動制御するADBを搭載すれば、運転の快適さがぐっと高まる。安全性も向上し、上位車種ならではの高い満足度をエンドユーザーに提供することが可能になる。それがA社の構想であり、技術力に定評のある当社への打診につながったのだった。
これは営業面でも大きなチャンスだった。それまで、A社との取引は海外向け製品が中心で、営業担当は取引拡大に向けて技術力や生産力について様々なアプローチを行ってきた。
四輪車向けADBについての実績はある。しかし、それを二輪車向けにするのは構造もシステムも配光も、二輪車に特化して改めて開発を行う必要がある。
さらに当社は、上位車種にふさわしいインパクトのある照射を実現するものとして、ADBを搭載して開発するヘッドランプに厚肉インナーレンズを用いることを提案。従来のリフレクターではなく樹脂製のレンズを採用することで照射強度が高まるとともに、製造時の消費電力を抑えられ、環境面への配慮も実現することができる。
ランプシステムである二輪ADBの開発に向けて、浜松製作所の営業部隊である浜松サテライト部の統括のもと、配光や構造、システム、生産などの担当部署が連携。プロジェクトが始動した。


開発も生産も。
プロジェクト成功に向けて
関係部署が連携
それまで、二輪車・自動車ランプ製品の製造を中心に行ってきた浜松製作所。ハードウェアとソフトウェアを一体化したシステム製品の開発を初めて経験する者も多く、このプロジェクトを成功に導くには様々な部署のメンバーがそれぞれの専門性を発揮しつつ協力し合うことが必要不可欠であった。
例えば制御システム。二輪車は四輪車と異なり走行時に車体を傾けるといった操作を行うため、車両の動きに合わせて能動的にビームのハイ/ローを切り替え、コーナリングランプを点灯させるシステムを、車載カメラ開発企業と連携してソフトウェア開発部署が構築。構造設計については、みなとみらいテクニカルセンターを拠点とする設計部署が担当。浜松サテライト部の技術窓口担当がA社の要求仕様を具現化し、それをもとに設計担当が各部材の配置などを検討しながら詳細設計に落とし込んでいった。
コストについてはA社からの要望に応えるため、営業担当は生産技術や品質管理、調達などの部署と綿密に協議。効率の良い製造を実現する生産ラインの検討や、従来よりも安価で性能も維持できる部材や素材の選定などを通じて開発や製造にかかる費用を低減した。
受注から量産時に使用する金型製作までのスケジュールがタイトで、開発初期は特に苦労が多かったと技術窓口担当と営業担当は口を揃える。世界初の製品のため知見もなく、手探りで開発に取り組むシーンも少なくなかった。しかし、この段階で社内関係部署と密に連携し技術・生産に関する意見や要望を取りまとめたことが、その後の工程のスムーズな進捗につながったこともまた事実だったと、二人は振り返る。

独自設備の活用により
開発をさらに加速
このプロジェクトのスムーズな進捗に一役買ったのが、秦野テクニカルセンターに位置する当社試験設備の「ライトトンネル棟」である。全長220m、世界最長級の屋内試験施設であり、降雨や濃霧などの自然環境をリアルに再現してランプ照射の検証実験を行うことができる。ここに社内関係部署の担当者はもちろんA社担当者にも足を運んでいただき、様々な条件下で路面配光を検討して確定していった。「効率良くシミュレーションでき開発速度が上がった」と、この設備に対してもA社から高い評価が寄せられた。
配光の検討についてはA社所有のテストコースで実車による評価も実施。上下・左右・前後、そしてバンク時の配光の性能を複合的に確認し、テストライダーの意見もヒアリングしながら規定の規格に収まる配光設計に反映した。余談ではあるが、通常このテストコースに当社のようなサプライヤーが立ち入ることはない。それが実現したのは、当社に対するA社との開発パートナーシップがあってのことだった。
こうして構造やシステムの仕様を確定し、試作品を製作。デザイン面や耐久性などの評価と調整を行い、四輪車ですでに法規化されていたADB機能を二輪車に導入するための法規面についてもA社と協働で対応した。同時進行で、営業担当は関係部署と連携し、生産ラインや部材・素材を準備。量産体制の確立を図った。
そして、いよいよ金型製作についてA社からGOサインが出た。厚肉インナーレンズを搭載した世界初・二輪ADBは、2024年10月、量産の時を迎えた。

交通安全の向上に
グローバルに貢献する日を
目指して
完成した二輪ADBの評価は高く、A社新車種の販売も好調で、現在、計画の生産ペースで出荷。エンドユーザーの安全性向上に、着実に貢献している。さらに、二輪ADBの性能やデザイン性がA社内でも話題となり、担当課に対し他の車種開発部署から次々に問い合わせが入っている状況だという。
二輪ADB開発プロジェクトの成果の一つは「社内の連携が強まったこと」と技術窓口担当は語る。新プロジェクトの始動を控え各部署に声を掛けたところ、「任せてください」と意欲的な答えが返ってくることがうれしい、と彼は笑顔を見せる。営業担当が実感しているのは、A社に技術力をアピールでき、信頼関係がこれまで以上に強化されたことだ。国内向け製品の取引量が拡大したことに手応えを感じる、と彼は言う。
今後はこの製品をより多くの車種に採用してもらえるよう、さらなる小型化・軽量化・コスト最適化を図ることが浜松サテライト部の目標である。特に推進したいのが、台数の多い海外向け車種への採用だ。技術窓口担当は海外赴任の経験から各国の道路事情を把握しており、製品の浸透を通じて各地の交通安全の向上に貢献していきたい、と展望を語る。
そして彼は、技術の継承についても見つめている。「今回のプロジェクトからおわかりいただけるように、当社は光において高度な技術力を有しています。そして現在、ハードとソフトを融合したランプシステムメーカーとして飛躍を遂げています。この技術を継承しさらなる高みへと引き上げる、若い世代の育成にも力を入れたいと考えています。」



